平和と教育を考えるツアー連絡会  
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平和の旅レポート
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「2010年ヨーロッパ平和の旅(リトアニア・ポーランド)」に参加して

カテゴリー: - admin @ 18時21分58秒

 今回の旅行は、添乗員である旅システム社長の内山博さんを含め、5名という非常に身軽な人数での行動となり、そのことが幸いし、いくつかのハプニング(突然のアクシデント)にも柔軟に対応できた素晴らしい旅行となりました。関西空港からフィンランド・ヘルシンキ行きの航空便が、ヨーロッパ全土を襲った寒波の影響で大幅に遅れ、予定外のラトビア・リガ経由でリトアニア・ヴィリニュスに到着したのが真夜中の1時でした。そして更に、5名全員のスーツケースが届かない(ロスト・バゲッジ)というサプライズもあり旅行初日からドキドキハラハラの2日目を迎えました。
 今回の「平和の旅」のメインの一つであるリトアニアでは、日本のシンドラーと呼ばれた領事館代理・杉原千畝さんの足跡を辿りました。当時の領事館は現在、博物館兼日本との交流センターの拠点として機能しており、館長と現地の方との交流を十分に果たすことができました。また、ロシアから独立したバルト3国(リトアニア・ラトビア・エストニア)の歴史的史実についても、現地の大学助教授の詳しいガイドとリトアニア国会副議長との交流(国会議事堂の見学を含む)で、有意義に学ぶことができました。
 もう一方で、ユネスコの「負の世界遺産」とされるポーランド・アウシュヴィッツ訪問では、同博物館の唯一の公式日本人ガイドである中谷剛(なかたにたけし)さんの訥々とした解説を受け、過去の戦争の悲惨さと現在の世界の現状を改めて考えさせられる研修となりました。また、アウシュヴィッツの館内では、アウシュヴィッツの生き残り証言者の方との交流もあり、中谷さんの通訳を介して、ナチスドイツとソビエト連邦からの二重の強制連行があったことを初めて知ることができました。
 その他、旅行中の主な見学地は、リトアニア・カウナスの旧市街地と展望台からの眺め、ヴィリニュスのカラムイ城や琥珀博物館、ポーランド・ヴィエリチカ岩塩採掘場、ポーランド・ワルシャワの旧市街地や国立王宮、生誕200年を迎えるショパンの心臓が納められた教会など。また、アウシュヴィッツで他のユダヤ人の身代わり犠牲となったマクシミリアノ・コルベ神父やコルチャック先生、また、ノーベル賞受賞者のキュリー夫人のことやナポレオンの歴史についても現地で学ぶことができました。
 最終日のフィンランド・ヘルシンキでは、市内見学とともに、OECD世界学力調査で第1位となったフィンランドの教育事情についても理解を深めることができ、日本の教育現場で働く私にとってはこの上ない研修の機会となりました。
 社会主義国ソ連とドイツ・ベルリンの壁が崩壊し、EU(ヨーロッパ連合)が成立して国境が事実上なくなり、アメリカのオバマ大統領が「核なき世界」を模索する昨今、私たち日本人はどこへ向かえばよいのか、どんな世界の未来像を描けばよいのかを考えさせられた今回の「平和の旅」。(人の命)を大切に考え、当時の日本政府の命令に背いて(革のようにしなやかに)ビザの発給を行ない、約6千人のユダヤ人の命を救った杉原千畝さんの思いや生き方を見習い、次の世代を担う子どもたちに何を残し、何を伝え、本当の幸せとは何かを考える大人になりたいと思う。広島・長崎などの記憶を忘れず、世界に誇ることのできる日本国憲法第9条を今一度、私たちは世界各国に発信して「戦いや争いのない平和な地球」の実現を目指して、頭で想像し、行動で創造してゆきたいと思います。最後に、今回の旅行を企画して下さった旅システムの皆さんと、10日間の旅行で喜怒哀楽を共にした同行者の皆さんに感謝申し上げます。

渡島管内・木古内中学校教員 後藤 健一