「ナヌムの家追悼館オープンセレモニー参加 韓国の旅」に参加して 2017年11月17日〜19日
昨年に続いての韓国は、冬に向かう寒さの中でした。昨年はローソクデモ≠偶然にも目にしたことを感慨深く記憶しています。今回は、追悼館オープンセレモニーへの「ナヌムの家」からのご招待を受け、嬉しい気持ちで韓国の地を踏みました。
仁川空港からソウルへ、途中の町の食堂で美味しい昼食を食べ、韓国挺身隊問題対策協議会が運営する「戦争と女性の人権博物館」を訪問しました。パンフレットには「戦争と女性の人権博物館は日本軍『慰安婦』被害者が経験した歴史を記憶・教育し、日本軍『慰安婦』問題を解決するために活動する空間です。また、現在も続いている戦時性暴力問題を解決するために連帯し、戦争と女性への暴力がない世界を作るために行動する博物館です」と書かれています。韓国挺身隊問題対策協議会は、「日本軍『慰安婦』問題解決を通じて被害者の名誉と人権を回復し、戦時下での女性への暴力を阻止し、正しい歴史の確立と平和の実現に寄与」することを目的に、1990年11月16日に活動を開始、「水曜デモ」や「ナビ基金」の活動を行っています。「ナビ基金」は、日本軍「慰安婦」被害者のハルモニの「日本政府からの法的賠償金の全額を寄付し、戦時性暴力被害女性をサポートする」との意思と、それに賛同する人々のカンパによって運営され、コンゴ民主共和国、ベトナムなどの戦時性暴力で苦痛を受けている被害女性や子どもたちのためにも使われているそうです。博物館の1階には、現在も戦時下で苦しんでいる世界の女性たちの多様な事例と写真が展示されています。ベトナム戦争で韓国軍によって性暴力被害を受けた、ベトナム女性の痛みも特別企画で展示されていました。米軍の戦争に加わった韓国軍が、ベトナムの女性たちに性暴力をした歴史を「恥ずべき歴史」として見つめ、「平和のための一歩を踏み出す場」と位置づけています。戦時性暴力を人権問題と据えて、「被害」とともに「加害」の歴史にもきちんと向き合う姿勢に感銘を受け、シンボルの黄色い蝶≠ェ世界に向けて羽ばたき続けている、なんとスケールの大きな活動なのだろうと感動しました。
ナヌムの家追悼館オープンセレモニーの日の朝は、氷点下まで気温が下がる冷え込みでした。セレモニーは「ナヌムの家」資料館前の広場(もちろん外)が会場だったので、「韓国の寒さは底冷えがするから」とカイロや毛布をガイドさんが用意してくれてありがたかったです。半円型の会場の真ん中に、ハルモニが毛布にグルグルくるまって座っていました。ハルモニの周りには韓国の若者が座り、右側にはユネスコなど海外の方々、左側が私たち日本からの参加者が座りました。伝統サムルノリ楽器演奏、韓民謡・演舞など韓国文化も楽しめました。新しくつくられた追悼館は、ハルモニたちの思い出の品々がハルモニの写真とともに展示されています。日本軍に連行された経路などつらく苦しい過去とともに、日本軍「慰安婦」被害者として解決をもとめたたかってきた活動、その活動を通じてハルモニ自身も成長したことなど、一人の人間として生きた証がそこにありました。慰安婦問題などなかったという主張に「私たちがいるのに、そんなことが言えるのか」と訴えるハルモニの声が、展示館のあちこちから聞こえてくるようでした。安信権所長、工藤千秋さん、ナヌムの家スタッフの方々、そして何よりイ・ヨンスハルモニとの夕食会は楽しく、とても素敵な思い出になりました。
日本軍「慰安婦」問題と同様にベトナム戦争時の韓国軍の蛮行、そして現在も世界の戦争地域で女性たちが性暴力の被害にあっている事実は、とても悲しいことです。「戦争」は人間の尊厳を壊し、人間らしく生きる権利も奪うものであることを、センチメンタルでなく事実として受け止め、過去の過ちを決して繰り返さない努力と行動が私たちには課せられているし、人類の未来への責任なのだとの思いを強くもって帰国しました。その立場で行動している韓国の方々との出会いは、私自信にとってとても貴重なお土産となり、その機会をつくっていただけたことに心から感謝します。
札幌 春木智江